2009年06月11日

「おいでおいで」の先


道場のS先生が、右手をヒョイヒョイと上下に、「おいでおいで」をする。

こういうときは、大抵、私が何かやらかしているときで、
とたんに、体は反対方向に、逃げて行きたくなる。

そうはいっても、本当に逃げたら、これまたえらいことになるので、
ヒュンと小さくなりながら、先生に引き寄せられてゆく。

「Nさんの射、基本がメチャクチャ!いくら的に当たる(中る)からって
 自己流で引いていたら いかんやろ!」

(え!?)

寝耳に水・・・・・だ。

Nさんは、弓道では初心者であるが、昔、アーチェリーをしていたことがあって、
全国大会の競技に出場したくらいの腕前だった人である。

和弓と洋弓は、仕組みが全く異なるので、引き方も体の使い方も全く違う。
それでも、Nさんは、押す腕の力が強く、安定感がバツグンなので、
和弓でも、ポンポン、よく中るのだ。

入会した初心者の中では、一番飲み込みも早く、動作もゆっくり、
丁寧に引いているので、安心、大丈夫だろうと、放っていた。

「Nさんは、注意すれば、必ず直してくれる方です。」と私。

「あれは単に、中ればいいと思ってるんじゃないの!」とS先生。
怒りは相当だ。

S先生の指摘を受け、Nさんの射を見てみると、

弓構え(射法八節の一つ。)がない!
基本の型が崩れている!

いつのまに・・・・・・・。
監督不行き届き・・・・それにつきる。

一つ一つ、確認、修正してもらった。

さすがにNさん。
「こんなにきついんですか!?今までの引き方と違う!」と
言いながらも、的確に直してくださった。

初心の時の射は、特に、いかようにも変容する。

最初に基本を叩き込んだつもりでも、慣れてくると、
自分のやりやすいように、アレンジしてしまっている。
それは、本人には、まるで悪気は無くて、無意識だからこそ、
起こりやすい。

かく言う私も、自分の射が一番よく分からない。

「これでいい。」なんて、思ったことはないが、
はたから見れば、思いあがりの射になっているのかもしれない。

上を目指せば目指すほど、「基本に忠実」。

「初心忘れるべからず」。

「言ってもらえるうちが、花」。

簡単なようで、難しい人生の摂理だ。




posted by akane | Comment(0) | 日記